優雅で美しい馬の姿を伝えたい。/甲良 みるき

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馬術専門誌「Maraque」(馬楽)の発行人であり、編集長・馬術ジャーナリストとして世界中を飛び回る甲良みるきさん。「日本でも、もっと馬術の魅力を広めたい」と活動を続ける甲良さんにとって、Whyとのコラボレーションは、馬とファッションの世界をつなぐ新しい試みでした。甲良さんの馬術への思いや、コラボバッグ開発までのストーリーをたっぷりお届けします。

馬を愛する少女が、馬術雑誌を作るまで

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——甲良さんと馬との出会いはいつのことでしょうか?

乗馬は15歳から始めました。当時、オグリキャップと武豊騎手が一世を風靡し、「競馬がスポーツになった」と言われた時期だったんです。新聞に大きく取り上げられているのを見て「私もジョッキーになりたい!」と思ったのが、始めたきっかけでした。

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——そして、乗馬クラブに通い始めたのですね。

はい。家族は乗馬とは無縁だったのですが、母が馬好きだったので応援してくれました。乗馬クラブには同世代の子もたくさんいたので、部活みたいな雰囲気でしたね。そこでいい仲間もたくさんできました。大学時代も通いましたが、卒業後は就職して一般企業で働いていました。

——どのような経緯で乗馬雑誌に?

乗馬クラブ時代の友人が、当時日本で唯一の乗馬雑誌だった「乗馬ライフ」の編集長だったんです。それで「手伝わない?」って誘われて。編集者の経験はなかったのですが、子どもの頃から「作家になりたい」と思うぐらい文章を書くことは好きだったんです。そう思うと、乗馬クラブのつながりが私の人生を変えたのかもしれないですね。

——「乗馬ライフ」には何年ぐらいいらしたのでしょうか?

約2年在籍し、編集長と二人で雑誌を作っていました。その後、会社の方針で「乗馬ライフ」を続けられなくなり、一緒にやっていた編集長はアメリカに移住することになったんです。私自身は「新雑誌を立ち上げたいけれど、経験もないしできないな」と、一年ぐらいモヤモヤした日々を過ごしていました。

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——その後、「Maraque」を立ち上げたのですね。

当時、馬の雑誌は「乗馬ライフ」しかなかったので、乗馬関係の人は皆そこに集まっていたんです。馬術だけでなく、趣味で乗っている人も、お祭りの馬に関わる人たちも……。彼らが「今始めたら手伝ってあげるよ」と声をかけてくださったので、始める決心がつきました。

——どんな想いで「Maraque」を立ち上げたのでしょうか?

日本では、馬術という競技自体があまり知られていませんよね。でも、世界的に見ればまだ未熟かもしれないけれど、日本の選手や馬たちも活躍しています。それを誰かが伝えないといけないと思ったんです。「Maraque」では海外の大会もたくさん取材しますが、日本人のライダーが出場する時は、その方を中心に取り上げています。

最高峰を見せてこそ、馬の魅力が伝わる

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——「Maraque」を作る上で、意識していることはありますか?

正確であること、正しい情報を発信すること。乗馬って“女性がやってみたい習い事”という感じでフィットネスやエクササイズのイメージが強いですよね。だけど本来は、伊達政宗やナポレオンの馬像に代表されるように、権力の象徴であり、勇ましいスポーツなんです。馬の持つ優しさや純粋さも魅力ですが、それだけでない、骨太で力強い部分も見せていきたいと思っています。

——表紙や紙面からその思いが伝わってきますね。

表紙の写真は、ほとんどが外国のフォトグラファーが海外で撮影したものです。世間一般の基準よりは、私が「かっこいい」と思ったものを採用するようにしています。ここに載っているのは世界トップクラスの馬ばかり。筋肉質で神々しくて、優雅で美しい馬に対象を絞っています。「どうしたら馬の魅力を伝えられるか」、そこに日々こだわっています。

——あえて対象を絞る理由は何でしょうか?

今までにないものを作りたかったんです。世界を魅了するホーススポーツの最高峰を伝えてこそ、馬術の関係者だけでなく、裾野にまで広がっていくと思うからです。

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——海外では、馬術はどのように受け止められているのでしょうか。

海外では馬に対する理解の度合いが日本とは異なり、様々な人が様々な観点から馬術について話すのを聞きます。馬術は誰もが知る伝統的なスポーツであり、文化として根付いている点は日本の”相撲”に似ています。日本でも誰もが力士を目指すわけではないですが、観て、応援して、その場の雰囲気を楽しみますよね。それと同じように、乗る以外にも馬との楽しみ方がたくさんあるのです。

——海外ではライダーもスタイリッシュですね。

馬術は、ただ技術を競うだけでなく、子ども達が見て「あんな風になりたい」と思えるような他人が憧れるスポーツです。身近であることもすごく大事ですが、「こんな風に乗りたい」「こんなファッションをしてみたい」と思ってもらえるように、日本でも馬術を紹介していけたら嬉しいです。

“馬”から始まったWhyとのコラボレーション

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——Whyとの出会いについて教えてください。

友人から「日本のバッグメーカーで、馬のモチーフを使っているブランドを見つけたよ」と聞き、初めて知りました。その後ご縁が広がり、Whyの石原社長にインタビューをしたり、「ロンジンマスターズ香港」でお会いしたりと、交流を深めてきました。

——「ロンジンマスターズ」とは何でしょうか。

世界のトップホースだけが集まる、最高峰の大会です。パリ、香港、NYと世界の大都市をツアーしていきます。日本では観ることのできない、世界クラスのラグジュアリーな戦いです。
2016年には、Whyもスポンサーとして出展されましたが、世界トップレベルのツアーに日本の企業が出たのは初めてのことだと思います。馬や選手だけでなく、ジャーナリストやWhyのようなファッションブランドも世界に進出していけば、日本の中でも馬がもっと身近になりますよね。Whyがその第一歩を踏み出して下さり、心から嬉しく思いました。

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——その後、Whyとのコラボレーションが始まったのですね。

Whyの石原社長が私の仕事を見て「エディターズバッグを作ったらいかがですか?」と提案してくださったんです。それまでもWhyのバッグはたくさん持っていたのですが、パソコンとカメラを持ち歩く私にとって「JOCKEY」のSmallは小さくて、Largeだと電車などで周囲の人に当たらないかと心配ですし、Tallだと物が遭難するんです(笑)。それに、私の仕事上、突然VIPルームに案内されることもあるので、「JOCKEY」のカジュアルなスタイルが気にかかることもあります。そこで、エレガントなデザインで、物がたくさん入るものを求めていました。他のブランドにもありますが、本革だと重いのがネックでした。

——その点、WhyのPVCは軽くて丈夫ですね。

大会の会場は芝生が多く、水を含んでいることもあります。ですから、濡れても平気なのが嬉しいですね。新しく作るなら、エレガントで、汚れなくて、軽くて、収容力があり、ジッパーがあるもの。それが条件でした。海外ではスリも多いので、ジッパーも欠かせません。

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——他にこだわったポイントはありますか?

パソコンとカメラが入ることです。このバッグはショルダーストラップがない代わりに口が広く開くので、物が取り出しやすいんです。前面はシンプルに、背面にはポケットをつけました。ハンドルは肩からかけられる長さで、手で持った際にも地面に着かず、不恰好にならないように。飛行機に乗る時に頭上に荷物を入れるので、ハンドルが折れることも必須です。それにこのバッグは、トランクに乗せた時にぴったりと収まるんです。これが今の私の旅スタイル。このバッグとトランクがあればどこでも生きていけます(笑)。

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——色は白にこだわっていらっしゃいましたね。

真っ白を使えるのもこの素材の魅力ですよね。普段なら白いバッグは汚れが気になりますが、これなら気兼ねなく持てます。使い勝手もいいですし、さりげなく持っていてもエレガントに見えます。海外取材の際に「どこで買ったの?」とよく聞かれるんですよ。

——バッグに名付けた「DADA」という名前の由来を教えてください。

「DADA」とはフランス語の子どもの言葉で「お馬さん」を意味します。その響きがかわいらしいし、日本語でも言いやすいですよね。加えて、「ダダイズム」の意味も込めています。既成概念にとらわれずに、新しい風を吹き込もうとした芸術運動のダダイズムにちなんで、「日本の社会にも新しい馬術の風を吹き込めればいいな」という私自身の思いも込めました。

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——どんな方に使ってほしいと思いますか?

丸の内や新宿などのオフィスで働いているような女性に持っていただきたいと思います。ハードに世界中を飛び回る中で使える“強度”と“使い勝手”が備わっていますし、スーツに合わせてもサマになるエレガントさがあります。革のように重くないので女性の味方ですね。私も本当にお気に入りです。

——Whyの中で、他に気に入っているバッグはありますか?

今一番の私の流行は「ハーネスライト 2WAYミニショルダー」です。乗馬の際など、両手を自由に走り回っている時は、ショルダーストラップをつけ、取材などかしこまった場ではストラップを外して持っていきます。軽くて柔らかい素材なのでバッグインバッグにも最適です。
仕事の時は「DADA」に、乗馬の時は「JOCKEY」の中にハーネスライトを入れて、お財布やクルマのキーを持ち歩いています。買い物に行く時はクルマに大きいバッグを置いて、中のハーネスライトだけを持って出かけることもできますし。ハンドルが革なので、カジュアルになり過ぎないのも気に入っています。超一押しアイテムです!

——最後に、今回のコラボレーションへの想いをお聞かせください。

馬好きにとって、馬モチーフは無条件に惹かれてしまうアイテムです。ですから、馬好きの人がWhyのバッグに興味を持ってもらうのもいいし、Whyを見て「馬をやってみようかしら」っていう流れがあってもいいですよね。今回のコラボレーションを通じて、日本の馬術への裾野が広がっていったら嬉しいです。

13_wiw0q0a2283甲良さんとのコラボバッグ「DADA」。パターンオーダーにて色違いも販売予定。

14_wiw0q0a2294LargeサイズにはPCとカメラがすっぽり収まり、収納力抜群。

_15_dada_small_sk2DADA Smallサイズ。ショルダーベルト付き。

Why×Maraque編集長・甲良みるき エディターズバッグはこちらから

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甲良みるき Miruki Kohra
1976年、京都府生まれ。「Maraque」編集長・馬術ジャーナリストとして世界最高峰の大会を取材する傍ら、みずからも馬に乗り、競技を楽しんでいる。2017年には、ジャーナリストとしての経験を生かし、Whyとのコラボレーションによるエディターズバッグ「DADA」を発表した。