ニューヨーク・ブルックリンに生まれ、現在はサンフランシスコでイラストレーター・画家として活躍するヴィヴィアン・フレッシャーさん。Whyとのコラボレーションでは「Horses in Wilderness」と題する絵を描いてくれました。
好きだった絵を仕事にしてみて
——イラストレーターになったきっかけを教えてください。
小さな頃からとにかく絵を描くことが好きだったので、高校卒業の時に、両親がヨーロッパに美術館巡りに連れて行ってくれました。それが10代の私にとってはすごく大きな刺激になり、私の中にある何かが目覚めたんです。それで、何とか絵を職業にしたいと思って、学校でイラストレーションを学びました。でも、今振り返ってみると、他になりたいものはなかったし、できることがなかったのかもしれませんね。
——実際に、イラストレーターになってみていかがですか?
マンハッタンで仕事をするのは、大変なこともたくさんありました。競争が激しいし、優秀なアーティストは大勢います。アートディレクターからのオーダーも哲学的で……(笑)。そのような厳しい環境に耐えたことで、今の私ができたのかもしれません。
——この職業に就いた頃と今で、変わったことはありますか?
私はもともと、ほとんどの作品をパステルで作っていました。しかし、時代とともにアートディレクションの方向性も多様になり、自分の作風や作品の幅を広げていく必要性を感じるようになりました。はじめは自分の作風を変えるのを苦痛に感じていましたが、徐々に楽しめるようになってきたんです。
——それは、作品の変化にも現れていますか。
はい。写真やグラフィックも手がけ始めたことで、ペインティングやイラストレーションも少しずつ変化してきました。新しいテイストの作品を作ることが楽しくなり、寝食を忘れて作品作りに没頭したこともありましたよ。
——他のアーティストに刺激を受けることはありますか?
「色彩」と「感情」がほとばしるような作品を作る人達に、刺激を受けます。エドワード・ムンク、トゥルーズ・ロートレック、ポール・ゴーギャン、ヴィンセント・ヴァン・ゴッホなど、有名な画家が多いですね。モチーフとともに感情があふれ出てくるのです。色彩の使い方や、感情移入の仕方などとても参考になりますし、自分の作品についてひらめいたりもします。
——日本についての思い出を教えてください。
一番印象に残っているのは、「資生堂ギャラリー」での個展です。他にも、様々な日本の方と一緒にお仕事をしました。どれも思い出深いですね。
画家として挑んだ、ホワイとのコラボレーション
——今回のホワイとのコラボレーションはいかがでしたか。
今回描いた「Horses in Wilderness」は、イラストレーターというより画家として臨みまし
た。「創業80周年記念」「馬や乗馬に関するもの」というテーマをいただいていたので、未来をイメージして、あえて星空が残る夜明けの絵を描きました。
——どんな意味が込められていますか。
80年というのはとても長い時間ですが、同時に、周年の区切りというのは、これまでの歴史に一旦線を引いて、これからまた心新たにスタートするようなイメージもあると思います。そこが夜明けのイメージと重なりました。夜が明けて、再び太陽が昇るように、81年目も歩んでいただけたらと思っています。
——色彩が美しいですね。
ホワイの商品を見たときに、カラーバリエーションの多さに驚き、興奮を覚えました。ですから、色彩の豊かさを感じさせるものにしたかったのです。赤やオレンジ、ブルーやパープルの馬を描いたのも自然な流れでした。ホワイのバッグを使うシーンを私なりにイメージして、どこか夢見心地で幻想的なシーンを描きました。
——馬たちが生き生きとしているのが印象的です。
画家として自由にのびのびと描けたので、その気持ちが馬たちに現れたのかもしれませんね。バッグを持ってくださる人にも、それが伝わったら嬉しいです。
——イラストレーターの40年間を振り返ってみていかがですか。
子供の頃から好きだった絵が職業になり、今でも生業として続けられていることに満足しています。好きなことで生活の糧を得られ、潤いも得られたという意味で、とても素敵な40年間でした。
——これからの抱負を教えてください。
これからもこのサンフランシスコで、絵を描いていきたいですね。私は自由に描かせてもらう方がより力を発揮できるタイプなので、良い出会いを通じて、今回のような素敵なコラボレーションができると嬉しいです。
ヴィヴィアン・フレッシャー Vivienne Flesher
ニューヨーク・ブルックリン生まれ。高校卒業後、「パーソンズ・スクール・オブ・デザイン」に 進学。1980年、美術誌「アメリカン・イラストレーション」にイラストレーションが12点掲載 され、イラストレーターに。1984年から日本での活動をはじめ、現在は、サンフランシスコに て、イラストレーター・画家として活躍。夫は、画家のウォード・シューメーカー氏。