人も馬もトータルでコーディネートする。そこから乗馬は始まるんです。/北井 裕子

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日本を代表する乗馬選手として、国内外で活躍されている北井裕子さん。2008年の北京オリンピックに続いて、2016年のリオオリンピックにも出場されました。そんな北井さんのもう一つの顔は、乗馬アイテムを扱うセレクトショップのオーナー。Whyとのコラボレーションアイテムの準備も着々と進んでいます。

乗馬は本来、スタイリッシュなもの

——馬術学校を営む家に生まれ育ったという北井さん。どんな風に馬と過ごしてきたのでしょうか?

小さな頃からポニーにまたがったりはしていましたが、本格的に乗馬競技を意識し始めたのは、中学2、3年の頃です。小さい大会に出ているうちに、「高校で国体を狙おう」と思うようになり、実際に3年間国体に出場しました。大学では馬術部に入ったので、学生の全日本大会にも出ましたし、3、4年になってからは大人向けの全日本大会にも出場していました。

02_139a7572——ご活躍の傍ら、ご自身のショップ「La valentina saddlery」(以下、ヴァレンティーナ)も運営されています。どんな想いで始められたのでしょうか?

ヴァレンティーナは2012年に始めました。基本的には、私が欲しいと思った乗馬アイテムを紹介しています。

国外の競技会に行くと、素敵な格好をした方がたくさんいらっしゃいます。国際大会では馬着や無口もトータルでコーディネートしている方が多く、馬運車から降りた時からが勝負。降りた瞬間、「これはすごい馬だな」ってオーラを感じさせるんです。

そういう方から刺激を受けて、「日本もいずれそうなったらいいな」という想いで始めました。これまで日本にはかわいい乗馬アイテムがなかったので、「それなら自分でやろう」と思ったのがきっかけです。

——どんなものを扱っていらっしゃるのですか。

イギリスのファーのお帽子、それに、マフラーやキュロット、小物ですね。日本にはないのですが、「La Martina」というアルゼンチンブランドの素敵なシャツなどもあります。日本のお客様は、ブランドは知らなくても「日本にないものだ」っていうことはご存知なので、入荷したらすぐに売れてしまうんです。

——今後の展開は?

これからやりたいと思っているのは、ジャケットのオーダー受注会です。私がオリンピックで着たジャケットで、海外でも有名な方々が着ているものなんです。お店もないようなドイツの職人さんが仕立ててくださっているのですが、すごい技術なんですよ。今回、オリンピックの日本チームは4人ともその方にお願いして、みんなでお揃いにしました。
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——オーダーはやはり違いますか?

日本だとみんな既製服でしょう? 「身体に合ってないな」と感じてしまうんです。きちんと仕立てしたものは、姿勢もきれいに見えます。

——北井さんも姿勢がおきれいですね。

私の燕尾服もいろいろなところに職人の技が生きています。私は華奢だから「身体が大きく見えるように」と、欠点を隠せるように仕立ててくださるんです。人から「立っていると小さいのに、馬に乗っていると大きく見えるよね」って言われるのですが、まさに服の力だと思います。

——すごい技術なのですね。

日本ではできない技術ですね。ですから、その方を呼んで、受注会ができるように、先日もドイツに行ってお話をしてきました。襟に馬の毛を入れた生地もあるんですよ。そういう、日本にはない、良いものを紹介していきたいですね。

Whyとの出会い、偶然が生んだ必然

——Whyとの出会いは?

元々は、「東京馬術大会」で出展ブースが隣だったんです。私はヴァレンティーナとして、ドイツの老舗ブーツメーカーに来てもらってブースを出していて。その時にお話ししたのが最初です。
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——Whyのライダーズバッグを使っていただいたのですよね。

オリンピックの時に、Why×HORSE LOVER kc.の3Wayライダーズバッグをいただいて。リオ(オリンピック)にも持って行きました。私と馬のテーマカラーは茶色なので、ブラウンを選びました。ブーツもヘルメットも入るし、リュックにもなるのがいいですね。

名前入りのライダーズバッグを持って、いざ、リオへ。
名前入りのライダーズバッグを持って、いざ、リオへ。

——そこからコラボが始まった?

Whyの生地って馬具の模様ですよね。カラーバリエーションも豊富でかわいいし、最初に生地を見た時に「これだ!」って魅了されたんです。それで、「この生地でかわいい乗馬アイテムをいっぱい作れそうだな」って思って、実際に作ってもらうようにお願いしました。

——これまでに手がけたものは?

無口やブーツバッグを作りました。Whyは50年の伝統があるブランドなので、品質もしっかりしていて信頼できますし、汚れてもサッと拭くだけできれいになる素材もいいですね。この馬の無口かわいいでしょう? 皆さんからも反響をいただいています。
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——製作する上でこだわった部分はありますか?

ブーツバッグは、ヘルメットと分けて別々にしまえるように、コンパクトにしました。私は、ブーツバッグにヘルメットも入れてしまっています。脚の長い方でも、上に載せれば入るようになっているので便利です。

ヘルメットバッグとの一体型はすでにWhy×HORSE LOVER kc.で出していたので、一体型はそちらに任せて私は省スペースに。

——製作の際は、かなり具体的に指示されたそうですね。

このポケットは、拍車を2つ入れたいので、立体にしてマチをつけました。あとは、肩からかけても手で持ってもいいように2Wayに。自分で使う時のイメージがあるので、細かくお願いしました。10色展開なのですが、想像以上にかわいくできたと思います。
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——製品のアイデアは次々に湧いてくるのですか?

好奇心旺盛だから、いつもいろんなことを考えているんです。何かやってないとつまらなくなっちゃう。計画してないとね。「今度はあの国に行きたいな」とか、「あそこに行きたいな」とか。今回のコラボでも、生地を見て「これ作ったらかわいいかな」というのはパッとインスピレーションで思い浮かびました。

——感覚が大事なんですね。

そうですね。馬選びもフィーリングですから。馬を探しに行っても、他の方が乗っているのを見て「これは違う」と思ったら乗らないですし、直感的に「この子だったらいけそう」って思ったら、すぐに決めます。製品を考えるのもそういう感覚でしょうね。第六感で生きているんです。
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——今後やってみたいことはありますか?

馬のグッズは海外で作っているものが多いから、いいものを輸入して日本に紹介したいし、逆に、日本でいいものができたら、海外にも紹介していきたいですね。Whyとのコラボでは納得のいくものが作れているので、もう少ししたら海外の試合に行った際に展示してみたいと思っています。

09_dsc01364新しいコラボ商品について打ち合わせをする北井さん。自分自身の経験をもとに、細部までこだわって何度も仕様の調整をする。

10_139a7831北井さんのお父様が営む、アシェンダ乗馬学校。洗練された雰囲気の緑あふれる乗馬クラブでは、いたるところに馬のモチーフがある。

北井 裕子 Yuko Kitai
1973年、神奈川県生まれ。大学時代は青山学院大学の体育会馬術部に所属。馬場馬術競技の日本代表選手として、これまでに2度オリンピック出場を果たす。自身のセレクトショップ「La valentina saddlery」では、Whyとのコラボレーションアイテムを発表。2016年末には銀座にショップ・イン・ショップのオープンを予定している。

撮影場所:アシェンダ乗馬学校
11_139a7849神奈川県横浜市にある、緑に囲まれた美しい環境のアシェンダ乗馬学校。1967年に前身の北井厩舎が設立され、北井裕子さんら国内外で活躍するトップライダーが在籍している。乗馬初心者から上級者まで気軽に騎乗できるフレンドリーな雰囲気が魅力。室内馬場も完備されており、雨天でも乗馬を楽しめる。
神奈川県横浜市瀬谷区阿久和西1-6-5
TEL:045(363)2501
www.la-hacienda-yokohama.com